キン肉マン マッスルタッグマッチ(バンダイ) : 感想・レビュー [ファミコン]

キン肉マン マッスルタッグマッチ : 感想・レビュー

対戦型格闘ゲーム

「キン肉マン マッスルタッグマッチ(バンダイ)」は2人対戦が可能な対戦型格闘ゲームになっています。

対戦型格闘ゲームとしては「トップビュー型」、「能力差のあるキャラクターでの2人対戦が可能」、「途中で自機がパワーアップする(必殺技の使用が可能になる)」、「タッグマッチ形式」と言うのはどれもファミコン初です。

対戦型格闘ゲームにはこれまで「アーバンチャンピオン(任天堂)」、「イー・アル・カンフー(コナミ)」がありましたが、「キン肉マン マッスルタッグマッチ」とそれらとでは異なる部分が多過ぎて、同じ対戦型格闘ゲームとは言っても比較対象にはならないように感じました。

漫画/アニメが題材のゲーム

「キン肉マン マッスルタッグマッチ(バンダイ)」は漫画、アニメを題材にしたゲームとしてはファミコン初のゲームです。

漫画/アニメを題材にしたゲームと言う事で姫は「キン肉マン」の原作漫画を読んでアニメを見てから()このゲームに挑みました。(また、ゲームに挑戦するに際して必要知識としてプロレスを一通り学びました。プロレスのルールや技などを本を通して簡単に学んだだけですが。)ゲームをプレイするに当たり、漫画/アニメの「キン肉マン」を知っているのと知らないのとではゲームの楽しみ方が変わって来るらしく、このゲームを十分に楽しむためには原作を知っておく必要があるようでしたので。

(原作漫画に就いては全36巻を読みました。アニメに関しては正確には、現在、見ている最中です。こちらも全話を見る予定です。)

ただ、漫画/アニメでの事前の学習があった事により、ゲーム性とは関係のない部分での不満、原作を知らなければ感じる事のなかったであろう「こうして欲しかった」と言う不満が出て来るところもありました。原作を知らなければ十分に楽しめないゲームですが、原作を知った分、ゲーム以外の部分にも目が向くようになり、見る目が厳しくなってしまったように思います。

8人の超人の選定

「キン肉マン マッスルタッグマッチ」では8人の超人を使用出来ますが、8人の超人の顔触れに就いては個人の好みが分かれるところだと思います。

姫はブロッケンJr.を削って代わりに悪魔将軍を入れて欲しかったです。アシュラマンが出場しているため「悪魔騎士全員を備えた悪魔将軍」とはならないかも知れませんが、それでも良いので悪魔将軍の姿が見たかったです。ただ、ゲーム内に登場してもダメージを与えるのが大変そうです...。肉体が(稀に現れるものの基本的には)ありませんので...。バッファローマンに頭部(黄金のマスク)を被ってもらう以外には...。

8人全員を正義超人で揃えるならアシュラマンのところはウルフマン(リキシマン)だったのだろうと思いますが、出場選手を正義超人で揃える必要もないと思いますし、個人的にはウルフマンよりはアシュラマンの方が個性や技の面では魅力的に見え、そう言う面ではアシュラマンの入っているこの選定は良かったと思います。

必殺技

必殺技に就いては「なぜこの技を選定したのか」と思うものや「技の形が変わり過ぎなのではないか」と思うものがあり、残念でした。

キン肉マンの必殺技「キン肉ドライバー」はなぜか背後から仕掛ける技になっていました。(これはアシュラマンのアシュラバスターもそうです。)

テリーマンの必殺技の名前は「ブルドッキングヘッドロック」になっていますが、原作ではテリーマンはそれを「カーフ・ブランディング」と呼んで使っていたので()、ゲーム内での呼び名も「カーフ・ブランディング」の方が良かったように思います。ただ、ゲーム内での技の見た目は「ジャンピング・ネック・ブリーカー・ドロップ」なのでそれを「ブルドッキングヘッドロック」や「カーフ・ブランディング」と呼んで良いものかとは思いますが。

(テリーマンが「キン肉星王位争奪編」で見せた「カーフ・ブランディング」は「ブルドッキングヘッドロック」とは異なる形の技になっていましたが、それまでは「ブルドッキングヘッドロック」を「カーフ・ブランディング」と呼んで使っていました。)

ラーメンマンの必殺技はジャンプキックで相手に襲い掛かる技ですが、これには「空手殺法」と言う呼び名が付けられていました。しかし、このラーメンマンの必殺技の呼び名に関しては、「空手殺法」のような大雑把な呼び名よりも、具体的な技名を与えた方が良かったのではないかと思います。(これがモンゴルマンであったり、王位争奪編のラーメンマンであれば「レッグ・ラリアート(フライング・レッグ・ラリアート)」の呼び名を与えているところだとは思いますが...。)

呼び名とは別に。姫はラーメンマンの必殺技と言えば「キャメルクラッチ」の印象が強く、ジャンプキックで襲い掛かる技よりはそちらの方が良かったです。

ロビンマスクの「タワーブリッジ」に関しては「背骨を折る技」と言うよりも「投げ捨ててマットに打ち付けてダメージを与える技」のように見えました。技の形が変わってしまっているように感じました。

バッファローマンの「ハリケーンミキサー」が「走って突進する技」ではなく「仰け反って飛び込む技」になっていました。

ウォーズマンの「スクリュードライバー」は全く回転しない状態になっていました。ですが、これは許容可能でした。ゲーム内での超人の動きを見ていて、これを回転させるのは無理な要望であるように感じましたので。(無理ならば「パロ・スペシャル」でも良かったのですが...。)

ブロッケンJr.の「ナチスガス殺法」はブロッケンマンが使用するのなら分かりますが、ブロッケンJr.は「ベルリンの赤い雨」で良かったのではないかと思います。

アシュラマンの「アシュラバスター」が「落下型の技」ではなく、「投げ捨ててマットに打ち付けてダメージを与える技」になっていました。キン肉マンの「キン肉ドライバー」のような落下型に出来なかったのでしょうか。

必殺技に関しては不満に感じる点が多かったのですが、これは好き故に強く感じた不満なのだと思います。超人達が繰り出す必殺技は「キン肉マン」の魅力の1つでもあり、特にかと。原作を知らなければこのような不満は感じなかったのだろうと思います。

火事場のクソ力

キン肉マンの強さの源とも言える「火事場のクソ力」。これがゲーム内に全く組み込まれていなかったのは残念でした。例えば...超人パワーの残りが少なくなったら「命の玉」を取らなくても必殺技が可能...などと言ったような他の超人にはない大逆転要素を備えていた方がキン肉マンらしいと思うのですが。

ただ、「火事場のクソ力」を組み込むとキン肉マンだけが特別になってしまうので、ゲーム内でのバランスを考えると行わない方が良いのだろうとは思います。「火事場のクソ力」で幾度も窮地を乗り切って来たキン肉マンが他の超人と同列になってしまうのは寂しく感じますが、それも仕方のない事だと理解します。

「命の玉」と身体能力の向上

「命の玉」を取得した超人は、一定時間、移動速度が上昇し、必殺技を使えるようになります。これは原作にはない(原作を無視した)ゲーム内での独自の要素ですが、独自であってもこう言ったゲームを盛り上げるための要素をゲーム内に組み込む事は悪い事ではないと思いました。

原作を好きな人からすると、出来る限り原作に忠実であって欲しいと願う部分もあれば、忠実でなくても構わないと思える部分もあるかと思いますが、「命の玉」のような要素に関しては姫の中では後者に当たります。原作に忠実である事が良いゲームの条件ではないと思いますし、(そう言いながらも必殺技に関しては不満ばかりでしたが...)楽しめるものにするために工夫が必要ならば行うべきだと思います。勿論、裏目に出るような工夫であればない方が良いと思いますが。

3種類のリング

ゲーム内ではリングは「普通のリング」、「氷リング」、「電気リング」の3種類のリングが用意されていました。

これに就いては「普通のリング」ばかりよりは色々な種類のリングがあった方が試合が盛り上がるので良いと思いました。「キン肉マン」でも様々なリングが登場していましたし。(しかし、そう考えてしまうと3種類では物足りなくなってしまいます。)

「氷リング」ではリングの特性が適用されていないところがありました。弾き飛ばされた後やロープの反動で戻った後は滑らなくなっていましたし、また、フライングボディアタックでは滑る時と滑らない時とがありました。(気が付いていないだけでこれ以外にもまだあるかも知れません。)この辺りの一貫性が崩れてしまっているのは残念でした。

「電気リング」ではタッチが出来なくなる場面がありました。相手チームの超人がロープで感電している時にはこちらのタッチ(試合権者の交代)が行えなくなるようです。なぜ交代出来なくなるのかは分かりませんが、再交代までの間が10秒に定められている以外では、交代したい時に交代出来るようにしておいて欲しかったです。

タッグマッチとして物足りない点

ゲーム内では、「交代出来る」と言う要素以外、タッグマッチならではの要素が含まれていないのが残念でした。タッグパートナーがただの交代要員になってしまっています。

カットが出来ない

ゲーム内での技はどれも掛ければ直ぐに決まってしまうものばかりであり、タッグパートナーのカットを必要とする場面はないと言えるのですが、例えば...基本技や必殺技に関節技を取り入れ、技の最中に徐々に相手の超人パワーが減って行くようにし、そこにカットをゲーム要素として組み込む...と言う事があっても良かったと思います。

コンビネーション技がない

タッグマッチの一番の見せ所と言えばコンビネーション技だと思うのですが、これが組み込まれていなかったのは非常に残念でした。(組み込むにしてもどう組み込めば良いのかは分かりませんが、身勝手な事を言えば、そこは作り手側に是が非でも何とかして欲しかったです。)

欲を言えば...

上記でも少し書きましたが、関節技は欲しかったです。例えば...接近してAボタンを押すと相手を弾き飛ばしますが、そうではなく、そこで短い間だけ相手を捕まえた状態になり、その状態の中で相手を弾き飛ばすか関節技に持って行くかをボタン操作で選択出来るようにする...などの方法もあったのではないかと思います。技が決まった後は...ボタンの連打を行う事で技から抜け出せるとか、タッグパートナーがカットに走るとか...色々と工夫が出来たところではないかと。ゲームに全く詳しくない初心者のアイディアなので有効かどうかは分かりませんが。それが無理だとしても戦い方にもう少し幅が欲しかったです。

他には「場外」はあっても良かったのではないかと思います。

攻撃可能方向が左右方向のみ

ゲーム内では攻撃可能な方向(キャラクターが向く事が出来る方向())は左右方向のみ、反動を利用出来るロープも左右のロープのみとなっています。(「電気リング」で感電出来るロープも左右のみです。)このため上下方向にいる相手に攻撃するためには左右方向へと回り込む必要があり、プレイしていて不自由に感じる事が幾度もありました。

(試合開始時は正面を向いていますが、移動すると左右方向しか向けないようになります。)

奥行きがあるのに左右方向にしか攻撃出来ない形は「奥行きが増えただけのサイドビュー型」のような感じを受けました。上下左右に移動する時はそれぞれの方向を向き、それぞれの方向に攻撃可能...と言う形の方が(それが問題を生じずに実現出来る事であるならばその方が)良かったです。

不平等な勝利条件

このゲームでは1人プレイでの勝利条件は時間内に相手の超人パワーを全て奪う事であり、時間内に相手の超人パワーを全て奪えなかった場合は自分の超人パワーが相手よりも多く残っていても1プレイヤー側の負けになるようになっています。これは不平等な勝利条件だと言え、納得出来るものではありませんでした。

超人パワーの残りが数値化出来ているのですから、2人プレイ時のように「超人パワーの多い方の勝利」としても良かったのではないかと思います。それが何らかの都合で無理だと言うなら、せめて引き分け扱いにして欲しかったです。引き分け再試合を取り入れれば問題ないように思います。

(2人プレイ時は超人パワーの残量が同量の場合は1プレイヤーの勝利となるようであり、2人プレイ時の勝利条件も不平等なものになっています。これも引き分けで良いと思うのですが...。)

背景音楽(BGM)

試合中は背景音楽(BGM)がなく、寂しさを感じました。こう言った作品こそ背景音楽を付けた方が良いと思うのですが...。

総合評価 : 16点

「キン肉マン マッスルタッグマッチ(バンダイ)」の総合評価は16点です。

「キン肉マン マッスルタッグマッチ」は原作で「キン肉マン」を学んでからの挑戦だったのですが、そのため、原作を知らなければ分からない魅力や楽しさを感じる部分もあれば、その一方で原作を知らなければ感じずに済んだ不満を感じる場面もありました。そして、残念な事に原作を知っている事により生じた良い評価よりも、原作を知っている事により生じた不満の方が全体的には多かったように思います。

(逆に原作を知らない状態でプレイしていれば原作との比較から生じる不満と言うものはなくなると思います。その代わり、ゲーム内の「キン肉マン」である部分はプレイヤーにとってあまり意味のないものとなり、ただの(少し派手な)プロレスゲームとなってしまいますが...。その場合、「キン肉マン」としての評価を入れずにプロレスゲームとして扱ったとしても評価は高くはならなかったと思います。プロレスゲームとしても如何かと思われる点が多くありますので。)

タッグマッチを謳っていながら(確かにタッグマッチではあるのですが、)タッグマッチならではの良さが殆ど見られず、「交代可能なシングルマッチ」と言った内容に留まっていたのが残念でした。原作で読んだ「夢の超人タッグ編」の影響でゲームを始める前から「タッグマッチ」である事に対して大きな期待を持っていたのですが...。勝手な期待であっても叶わないと寂しいものです。

「命の玉」を取得する事によって必殺技が使用可能になる仕組みは良かったと思います。原作にはない設定ですが、この一発逆転を可能にする要素はゲームを盛り上げるには有用だったのではないかと思います。

「キン肉マン マッスルタッグマッチ」は「キン肉マン」をゲーム化したものとして見た場合、「キン肉マン」の魅力が感じられるものに仕上がっているかと言うと、そうとは言えないように感じました。また、単純にアクションゲーム、格闘ゲームとして見た場合、目新しさを感じる点は色々とあったのですが、基本的な部分での不満や物足りなさをそれ以上に感じました。面白さ、楽しさ、夢中になれる要素も感じられず...評価点は16点です。

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