ベースボール(任天堂) : 感想・レビュー [ファミコン]

ベースボール : 感想・レビュー

野球として物足りさ、作りの甘さを感じる部分が多い

姫は今まで野球の事は全く分からず、このゲームに挑戦するために本を読んで少し勉強しただけなので野球については詳しいとは言えないのですが、それでもこの「ベースボール(任天堂)」は野球として物足りなさや作りの甘さを感じる部分が多くありました。

  • 選手の個性や能力に差が無い
  • 外野が全員強肩
  • 球速160km/hを超えるピッチャーが各チームに...
  • ピッチャーの交代が出来ない
  • バッターの交代が出来ない
  • 常にセットポジションから投球する
  • ピッチャーの投球フォームと球種が少ない
  • プレート上の立ち位置を変える事が出来ない
  • 死球が無い
  • 振り逃げが無い
  • パスボールが無い
  • 滑り込み(スライディング)が無い
  • ダイビングキャッチが無い
  • バットを引き戻せない
  • 守備シフトの要素が無い
  • 適切なバント処理を行わない
  • 送球が全てダイレクト
  • フライ性の当たりの時に一塁前で止まる
  • ホームベース通過後必ず1塁側に抜けて行く

選手の個性や能力に差が無い

選手には個性や個々の能力差が感じられませんでした。体格の大きな選手、小さな選手、打撃や投球で独特の構えを持った選手、足の速い選手、打撃力の高い選手、守備力の高い選手、球の速いピッチャー、変化球の得意なピッチャーなど、選手によって様々な能力差があっても良いと思うのですが...。このゲームに挑戦する前に勉強の一環として、野球のいろはが書かれた本に加え、「ドカベン」、「大甲子園」を読んだせいもあってか、個性の無さや能力差の無さが余計に気になりました。

外野が全員強肩

外野手はどのチームも全員強肩で、外野のフェンスの位置からホームベースまでノーバウンドで、それも山なりではなく直線的にボールを送球する事が出来ます。

球速160km/hを超えるピッチャーが各チームに...

どのチームも160km/hを超える球速の球を投げるピッチャーが毎回マウンドに上がっています。姫の勉強した限りでは160km/hを超える球を投げる事の出来る人間は多くはないはずなのですが...。最速はどの球団も164km/hのようです。(姫が確認した範囲では。)

ピッチャー/バッターの交代が出来ない

ピッチャーやバッターの交代がありません。選手の能力差は皆無なので交代する意味は無いのですが...。ピッチャーは何球投げても疲れる事はないようですし...。

常にセットポジションから投球する

ピッチャーはランナーの有無に関係なく常にセットポジションからの投球を行います。ワインドアップで投げる事はありません。投球フォームもオーバースローしか無く、サイドスローやアンダースローのピッチャーがいても良かったと思います。

ピッチャーの投球フォームと球種が少ない

ピッチャーの投球フォームはオーバーハンドスローしかないようです。サイドスローやアンダースローと言った他の投球フォームがあっても良かったと思います。

球種はストレート(高速、中速、低速)、カーブ、シュートしかありません。姫の勉強した本の中にはスライダー、シンカー、チェンジアップ、フォークボール、ナックルボールなど、多くの球種が載っていたのですが...それと比べると寂しいものになっています。縦の変化を入れて欲しかったです。

プレート上の立ち位置を変える事が出来ない

ピッチャーはプレート上での立ち位置を変える事が出来ません。これくらいは出来ても良かったと思います...。

死球/振り逃げが無い

死球も振り逃げもありません。ボールが打者と重なった場合はボールは打者をすり抜けます。打者が2ストライクから空振りをした時にボールが捕手から逸れていても打者はその場で即アウトとなります。

パスボールが無い

この「ベースボール」はパスボールの要素を取り入れていないようです。ボールがキャッチャーから大きく逸れる事はあるのですが、その場合、逸れた球をわざわざ取りに行かなくてもキャッチャーの手元には直ぐに有効なボールが用意されます。このため、事実上パスボールは無いと言えます。

例えば、ランナーが一塁にいる時にピッチャーの投げたボールがキャッチャーから大きく逸れたのを見て一塁ランナーを二塁に走らせたとします。普通であれば楽に二塁を奪う事が出来る場面ですが、このゲームの場合はキャッチャーは逸れたボールを取りに行かなくても直ぐに(どこからか手に入れた)有効なボールを手元から二塁へと投げてランナーを刺す事が出来ます...。また、例えば、ボールが逸れたのを見て三塁ランナーをホームに走らせたとしてもキャッチャーがそのままベースカバーに入ればランナーはホームでアウトになります。キャッチャーの手には動かずともどこからか手に入れた有効なボールがあるためです。振り逃げが無いのもボールがどんなにキャッチャーから逸れてもキャッチャーの手元に直ぐに有効なボールが用意されるためかも知れません。ゲーム内では野球のルールが大きく無視されているようです...。

滑り込み(スライディング)/ダイビングキャッチが無い

走塁では滑り込みが、守備ではダイビングキャッチがありません。この「ベースボール」は野球のダイナミックな部分を全く表現出来ていませんが、滑り込みやダイビングキャッチが無いのもその1つだと思います。

バットを引き戻せない

このゲームではきちんとしたバントの構えが出来ないのでバントの時はスイングを途中で止めた形にしてバントの代わりにする事になるのですが、このスイング途中で止めたバットは直接引き戻す事が出来ず、元に戻すためにはバットを1度振り切るしかないようになっています。このため、バントをしようと構えているところにピッチャーが大きく外して来た場合、(バットを引き戻す事が出来ればボール判定になりますが、)バットを引き戻す事が出来ないためにストライクを取られる事になります。バットをスイング途中で止めたままでもストライク...振り切って元の位置に戻したとしてもストライクになってしまいますので...。

守備シフトの要素が無い

守備にはシフトと呼べるものはほどんどないようです。二塁が空いていて一塁にランナーがいる時に一塁手がファーストベースに入っているのを見ましたが...。

適切なバント処理を行わない

内野手のバント処理は適切なものとは言えません。内野手は打者がバントをして打球が前に飛んだのを見てから初めて行動を起こしてボールを取りに向かいます...。このゲームでは実際の野球(...とは言っても本で学んだ限りの野球)よりもバントでのヒットになる確率が高いようですが、バント処理の質の低さはその一因になっているように思われます。

送球が全てダイレクト

送球は全てダイレクトで行われます。状況に応じて他の野手がカットに入ると言うような事はありません。外野手は外野からホームベースまでノーバウンドで送球が出来ますし、どんなに遠くからでも必ずストライク返球が出来ますので中継プレイは必要としないかも知れませんが、走者の走塁状況によってはカットは必要になると思います。送球がノーバウンドで来るため難しいと言えば難しいかもしれませんが...。

フライ性の当たりの時に一塁前で止まる

フライ性の当たりの場合、バッターランナーは前方にランナーがいなくても打球のバウンドが確認されるまで一塁の手前で停止して事の行く末を見守ります。ヒットになったり野手が落球する場合も考えて停止するべきではないと思うのですが...。

ホームベース通過後必ず1塁側に抜けて行く

ホームベース通過後の選手は両チームとも一塁側へと抜けて行きます。三塁側がベンチの選手は遠回りして自軍のベンチに戻っているものと思われます...。


他には描画面で甘さを感じる部分や構成面で物足りなさを感じる部分もありました。

  • ピッチャーが目線を向ける方向が不自然
  • 右利き、左利きが固定されていない
  • フェンスに消えるボール(エンタイトルツーベース)
  • 場外ホームランの際に空にボールの影が出る
  • チームが6チームしかない
  • 球場が常に同じ
  • 1試合の勝敗しか争わない

ピッチャーが目線を向ける方向が不自然

一塁にランナーがいる時、右ピッチャーは投球動作の前に、一瞬、一塁に目線を向けます。これは良いと思うのですが、問題は左ピッチャーの時です。一塁にランナーがいる時、左ピッチャーはなぜか投球動作の前に、一瞬、三塁側に目線を向けます...。左ピッチャーがこのような無意味な行動を取る理由は分かりませんが、もしかすると左ピッチャーは右ピッチャーを単に反転させただけのもので、その名残が修正されずに残っているのかも知れません。

また、ピッチャーは二塁ランナーや三塁ランナーの確認は行いません。(左ピッチャーのランナー一三塁の時は三塁を確認しているように見えますが、これは左ピッチャーが一塁にランナーがいる時に三塁を見る動作で、三塁ランナーがいるから行っている訳ではありません。)折角、「目線を向ける動作」を入れたのだからもう少し煮詰めて作って欲しかったところです。

右利き、左利きが固定されていない

野手は右利き、左利きが固定されていません。例えばピッチャーは右利きでも、左利きでも一塁、二塁、ホームへの牽制球は右手で行い、三塁への牽制は左手で行います。野手(投球後のピッチャーも含めて)は移動中に利き手が変わったり、送球時に利き手が変わったり、ベースカバーに入った時に利き手が変わります...。見えない速さで右手から左手、左手から右手にグローブを付け替えているようです。

フェンスに消えるボール(エンタイトルツーベース)

外野に飛んだ打球がバウンドしてフェンスの中段少し上くらいにぶつかった際にボールがそのままフェンスの中に消えてエンタイトルツーベースになる事があります。グラフィック的には明らかにフェンスを越えていないのですが...。フェンスにぶつかったボールはどこへ...。

場外ホームランの際に空にボールの影が出る

場外ホームランを打った際にはフィールドにボールの影が出るように場外の空にもボールの影が出る事があります...。

チームが6チームしかない

チームが6チームしかないのは少し寂しいと思います。この「ベースボール」が作られた時代にはセ・リーグ6球団、パ・リーグ6球団の全部で12球団あったと言いますし...。

球場が常に同じ

球場が常に同じなのも改善の余地ありだと思います。世の中には色々な球場があるそうなので...。

1試合の勝敗しか争わない

プロ野球は複数試合を行って優勝や日本一を、高校野球はトーナメント戦を行って優勝を争うようですが、このゲームは1試合の勝敗を争うだけで、優勝のようなものはありません。これは物足りなく感じる部分でした。

パソコンとは違い新しいデータを記憶出来ない事を考えるとゲーム時間が極度に長くなる事を避けた作りになるのは仕方が無い事だと思いますが、1試合での勝敗を争うだけでなく、他のモードも...例えば6チームによるトーナメント戦や総当たり戦などがあっても良かったのではないかと思います。

ただし、今の退屈なゲームままで複数試合を行っても単にプレイヤーの苦痛が長くようになるだけなので、複数試合で勝敗を競うようにするのであれば「複数試合行っても退屈しないゲーム」にする必要はあると思いますが...。

作りが甘いでは済まない部分も...

野球と言うゲームの性質上、作りが甘いでは済ませられない部分もありました。

  • 守備が頻繁に、著しく乱れる
  • ストライクとボールの判定が通常と異なる

守備が頻繁に、著しく乱れる

野手の守備は捕球まではオートで行われるようになっていますが、この守備の精度がこの上ないと思えるほど低いものになっています。

野手はそれほど速くない速度で正面に転がって来た打球をわざわざ自分から身を避けてまで捕球を拒否する事があります。また、外野の場合は自分が最もボールに近いのに全く捕球に向かずに自分よりも遠くにいる野手に処理を任せたり、途中までボールを追っていたのに突然止まってボールよりも遠くにいる他の野手に処理を任せたりする事もあります。

この守備の乱れのために、例えば...内野ゴロで内野手の正面に転がった打球が内野手の守備放棄により内野を抜けてヒットになる...更にはそこに外野手の守備放棄も重なり、ただの内野ゴロだったはずが打球がフェンスまで転がって行ってバッターはその間に二塁や三塁まで到達...と言った事や、センターが処理しなければいけない打球をセンターが守備放棄してレフトが取りに来ている間にシングルヒットが二塁打に...と言ったような事が1試合の中で何度も起こる事が極普通の事となっていました...。

このような守備の乱れに対しては、やはり、「打ち取ったはずなのに」、「一塁打で済んだはずなのに」と思うものであり、それが1度や2度ならまだ耐えられるのかも知れませんが、1試合の中で何度も同じように繰り返されるとなると、そこに大きな苦痛を感じるようになってしまうものです。姫はその苦痛のために何度か挫折しそうになりました...。「ベースボール(任天堂)」はこの乱れやすい守備のためにプレイヤーにとって大きな苦痛を与えるゲームになってしまっているように感じます。

姫は本で勉強しただけなので本物の野球の事は分かりませんが、こう言った守備が本物の野球でも多く見られる普通の事だと言うのであれば直すべきは「姫の感覚」と言う事になるのかも知れません。しかし、恐らくはそうではないと思います。自分の正面に転がって来たボールを避けたり、自分の近くにあるボールを取りに行かなかったりする事が普通だとは思えませんので...。

ストライクとボールの判定が通常とは異なる

ストライクとボールの判定は、ボールがホームベース上を通過したかどうかではなく、ボールがキャッチャーの中心付近に来たかどうかで判定されているようです(※)(※※)。

打つ方はベースの上を通過しそうかどうかでバットを振るか振らないかを判断するため、この辺りはきちんと作っておいて欲しかったところです。

(※以下のようにボールがホームベースの上を通過していても最後にキャッチャーの中心付近に到達しなければ判定はボールになります。)

ストライクとボールの判定 1[ベースボール : 裏技]

図1) ボールは確実にベースの上を通過しているように見える。(ボールは三塁方向から一塁方向へと曲げている。)

ストライクとボールの判定 2[ベースボール : 裏技]

図2) ベースの上を通過してキャッチャーの右側へ...。

ストライクとボールの判定 3[ベースボール : 裏技]

図3) キャッチャーがボールを捕球。判定はなぜかボールとなる。

(※※以下のようにホームベースの上を通過していなくてもボールがキャッチャーの中心近くに到達した時はストライクの判定になります。(実験を分かりやすいものにするために超スローボールを使って一塁側からホームベースを回り込ませてキャッチャーへと到達させています。))

ストライクとボールの判定 4[ベースボール : 裏技]

図4) ボールをファースト方向へと大きく曲げた後、キャッチャーへと向けて曲げる。

ストライクとボールの判定 4[ベースボール : 裏技]

図5) ホームベースの横を通ってキャッチャーへと向かう。(ホームベース上の通過を確実に避けるためにこの段階ではホームベースに向かいながらも少しだけ一塁方向へとボールを曲げている。)

ストライクとボールの判定 4[ベースボール : 裏技]

図6) 捕球寸前の状態。ここまで全くホームベース上を通過していない。

ストライクとボールの判定 4[ベースボール : 裏技]

図7) そのままキャッチャーが捕球。到達地点はキャッチャーの右肩付近。ホームベース上を通過していないが判定はストライクに...。

良いところもあるにはあるが...

姫には悪いところばかり目に付く「ベースボール(任天堂)」ですが、良いと思えるところも僅かながらあります。

  • 審判が判定のアクションをする
  • 投球前にピッチャーが顔を振る事がある
  • キャッチャーがピッチャーにボールを返す
  • スリーバント失敗
  • バッターボックスでの立ち位置を変える事が出来る

審判がストライク、ボール、アウト、セーフ、ホームランの判定を動作付きで行います。

ピッチャーは投球前に顔を振る事があります。キャッチャーとのサインの確認を行っているものと思われます。

キャッチャーはボールを捕球した場合もそうでない場合も投球前のピッチャーにボールを返球します。

2ストライクからのバントの失敗はアウトになります。スリーバント失敗を取り入れるなら死球や振り逃げも取り入れて欲しかったですが...。

バッターボックスでの立ち位置を変える事が出来るの当然の事であり、特に良い点と言う訳ではないのですが、ピッチャーのプレート上での位置を変える事も出来ないゲームにしては良い方なのではないかと思います。

背景音楽(BGM)がない

節目に短い音楽が流れるだけで、プレイ中には、ホームラン時を除き、音楽がなく、投げたり、打ったり、走ったりの効果音だけになっています。プレイしていても寂しいので曲くらいは付けて欲しかったです。

総合評価 : 4点

「ベースボール(任天堂)」の総合評価は4点です。

1回目は面白いとは感じられなかったものの野球ゲームに対する新鮮さもあってそれなりに楽しめました。しかし、2回目以降はその新鮮さも徐々に薄れて行き、何度か遊んでいる内に直ぐにただの退屈なものへと変わってしまい、遊べば遊ぶほど時間を無駄にしているように感じられるようになりました。

「ベースボール」は野球の基本部分での完成度が低く、ゲームとしては非常に粗雑な作りになっていると思います。特に自動的に行われる守備動作は乱れる事が多く、プレイヤーの精神に大きな苦痛を与える原因にもなっています。姫は本物の野球については詳しくありませんが、少なくとも本で学んだ限りでは野球はダイナミックさに加えて戦略や緻密さを要求されるスポーツに見えました。しかし、この「ベースボール」ではそのどちらも全く再現されていません。作り手側はこの完成度で世に出す事に抵抗を感じなかなったのか...とさえ思ってしまいます、残念ですが。

姫はこの「ベースボール」が初の野球ゲームなので他との比較で点数を付ける事は出来ないのですが、自分の中の「楽しめたか楽しめなかったか」を基準にして4点と言う点数を付けました。ただ、実用的とは言えない上に苦痛をもたらす「自動守備」よる減点が大きく、「自動守備」がきちんと働くものであったなら8点にはなっていたと思います。(元々、全体的に面白いとは言えないため「自動守備」が改善したところでそれほど高い点数にはなりませんが。)

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