F1レース(任天堂) : 感想・レビュー [ファミコン]

F1レース : 感想・レビュー

F1のお勉強をしてから挑戦

姫は「F1レース(任天堂)」に挑戦する前にF1についての勉強を一通り行いました。今まで鈴鹿サーキットにF1観戦に連れて行かれた事は何度かあるものの、興味がなかった事からF1に関する知識をほとんど持ち合わせていなかったためです。

これがF1...

ゲームをプレイした姫は直ぐに大きな戸惑いを覚えました。それはこの「F1レース(任天堂)」が姫が今までに見た事のあるF1、今回の挑戦に当たって学んだF1とはあまりにもかけ離れてたためです。「任天堂の言うところのF1」と「姫の中のF1(恐らく一般的なF1と言えるもの)」とはほとんど共通点がなく...強いて挙げればフォーミュラーカーらしき車が路面を走っていると言うところくらいです...果たしてこれをF1と呼んでも良いものかと頭を悩ませてしまいました...。

直ぐに爆発する車体

車は敵車と軽く接触しただけでも車体全体が爆破するようになっています。敵車の後輪にフロントノーズ、フロントタイヤが当たっただけで瞬時に爆発です...。通常のF1であればフロントノーズにダメージがあればピットに戻ってフロントノーズを交換、タイヤのパンクチャーやバーストであれば可能なら3輪状態でピットまで帰ってタイヤを交換するところが...です...。車体のサイドやリアが軽く接触しても同じように爆発します...。

爆発は敵車との接触だけではありません。コースの両側に置かれているボールや看板にぶつかっても爆発します。驚く事に1桁台の時速でぶつかってでもです...。

それに比べ、敵車はこちらとぶつかっても爆発しませんし、減速もせずに走り去って行きます。ここまで来ると自分のマシンだけ車体各所に爆発物を仕掛けて走っているとしか考えられません...。

通常であればこのような車がクラッシュテストを通るとは思えませんし、(テストの度に爆発する姿が目に浮かびます...)走ったとしても他のチームやドライバーからは苦情が殺到すると思います。

実際のF1ではドライバーの安全の確保に勤めていますが、このゲームの中にはそれが微塵も見られません。残念な事です。

直ぐに復活する車体

爆発した車体はその場で直ぐに復活します。恐らくドライバーも復活しているものと思われます。復活後の車体は接触前と同じコンディションで走る事が出来ます。

マシンが爆発した際にレースは中断されずにそのまま続けられますが、(レッドフラッグやイエローフラッグが振らる事もなければセーフティーカーも出ません)それは「爆発した車体が直ぐに復活したため必要ない」と言う判断なのかも知れません。

コースの両脇のポールと看板

コースの両脇にはポールと看板が立っています。そしてこのポール、看板にぶつかると車体が爆発します。通常のF1とは違い車の安全が全く考えられていないと言えます。(現在のF1は、コンクリートウォールがあるコースも一部ありますが、ランオフエリアが設けられていたり、広いサンドトラップ、芝が用意され、その向こうにはタイヤバリアがあると言ったようにコース上の安全が確保されています。この「F1レース(任天堂)」が発売された当時も、現在ほどではないにしろ、安全に対する意識はそれなりにあったと思われ、無意味なポールをコース両脇に置くような事は通常では考えられません。コース上に街灯などがあった時代もあるようですが、それはもっと昔のようですし...。)

通常のF1では直線コースの両脇に看板広告が見られますが、発泡スチロールのような軽い材質で出来ていて車がぶつかっても大丈夫なようになっています。(もしかするとゲーム内のポールや看板も軽い材質、通常の耐久力を持った車であればぶつかってもダメージを受けないような材質で出来ていて、単に自機の車だけが異常に爆発しやすいと言う事なのかも知れませんが...。)

しかし、自機の車も許可されて走っていると思われる事から、最も弱い車に合わせて、それが発泡スチロールだったとしても危険物と見做してして撤去した方が良いと思います。看板広告なら置く意味は分かりますが...このポールはどこからどう見てもただの障害物になってしまっていますので...。(元々障害物として置かれたのものなのかも知れませんが...そうだとするならF1と言うからには尚更撤去すべきですし、もし、障害物として以外の何かきちんとした意味を持ったものだとしてもやはり危険物としてコースの傍からは撤去すべきだと思います。)

違うカテゴリーの車とレース...

F1は全チームが同一のテクニカルレギュレーションの中で車の開発を行い優劣を競うモータースポーツですが、このゲームの中ではその根幹から崩れているようです。自機の車体は敵車と比べて明らかに別次元の速さで走る車になっていて、違うカテゴリーの車とレースをしている感じを受けました。とても同じレギュレーションに従っている車だとは思えません...。

自機の車があまりにも他の車と性能が違うためコース上の全てで楽々オーバーテイクが可能になっています。そのためゲームに挑戦する前に勉強したオーバーテイクの仕掛け方やブロックラインを使った守り方、クロスラインでの抜き返しなど...が全く役に立ちませんでした...。(ゲーム内容からすると例え敵車との性能差が縮まったとしてもドライビングテクニックを発揮出来るようには思えず、それ以前の問題のように感じますが...。)

セッティングが行えない

マシンのセッティングは一切行えません。ゲームに挑戦する前に勉強してコース特性に合わせたセッティングの基礎まで覚えたのですが...これも全く役に立ちませんでした...。

ギアはハイとローのみ

現在のF1マシーンはセミオートマで7速までギアがあるらしいのですが、このゲームの自機のフォーミュラーカーは2速...ハイとローしかありません...。それでも400km/h以上まで滑らかに速度が上がって行くのは凄いと思います。

スポーツレギュレーションの違い

フリープラクティス、クオリファイがありません。スタート時は1台でスタートし、敵車は先にコース上を走っています。敵車との順位は競いません。一切のペナルティがありません。コンストラクターズポイントもドライバーズポイントもありません。

ここでもF1の要素が全く見当たりません。

周回数が2周しかない

1つ目から4つ目までのコースの周回数は2周に設定されています。確かに通常のF1のように1レースで300km以上、1時間半以上(2時間未満)も走っている訳には行かないのでゲームとして周回数を少なくするのは仕方が無い事だと思いますが、2周と言うのは少な過ぎるように思います。(敵車との性能が大きく違いますし、そもそも順位を争っていないので周回数は無意味な要素に近いのですが...。あくまでもF1でありレースであると言う観点からです。)

敵車の走り方

敵車は直線であってもコーナーであっても唐突に走行ラインを変更します。コース取りではなく意味もなく車線変更しているだけのように見えます。あからさまに不自然な走りを行います。

敵車はただの走る障害物

ゲーム内では敵車と順位やタイムを競う事はありません。そのため敵車はプレイヤーの車を妨害するために置かれたただの走る障害物でしかないと言えます。ゲームのタイトルには「レース」と言う言葉が付いていますが...レースとしては成立していないようです...。

観客がいない

興行であるはずなのに観客を入れるスタンドがなく観客が1人もいません。

ピットがない

ピットレーンもピットもありません。

車体は爆発しても直ぐに元の状態で復活しますし、車体のコンディションが悪くなる事もなく、給油もタイヤ交換もないのでピット作業の必要がなく、ピットもピットクルーも必要がないようです。

また、ドライブスルーペナルティもストップ&ゴーペナルティもないので(と言うよりもペナルティの一切がないのですが...。)ピットもピットレーンも必要ないようです。

交差が描画されていない

交差のあるコースでも交差している地点には交差しているような描画は行われていません。立体交差なら立体交差、平面交差なら(事故が多発する事になりますが...)平面交差の描画を行って欲しかったです。レイアウト上では明らかに交差しているのですから...。

エンディングがない

1つ目から4つ目までのコースの周回数は2周ですが、5つ目のコースでは周回数の設定がなくなりタイムオーバーになるまで走り続ける事になります。エンディングもなく、ただひたすらゲームオーバーになるまでです。

ゲームの目的が順位を競うものではないため(点数を競う)1位、2位、3位...と言った順位もなく、ボディウムに上る事もありません。寂しい限りです...。

総合評価 : 1点

「F1レース(任天堂)」の総合評価は1点です。

1点はF1として見た場合の点数です。説明書にも「最高峰の自動車レースであるF1(フォーミュラ・ワン)レースが、家庭で楽しめます。...(説明書より引用)」とあるのであくまでもF1を扱ったレースゲームと言う事で評価しました。

F1の名を使っておいてこのゲーム内容と言うのはあまりにも詐欺的ですので...もしかすると1点と言うのも与え過ぎなのかも知れません...。(レビューの方針上、0点やマイナスは付けない事にしているため、1点が姫のレビューでの最低点になります。これ以下の点数は付けたくても付けられないのが辛いところです。)

F1と名付けなければ、例えば「他の車との接触を避けながら車を走らせて時間内にゴールを目指すゲーム」と言うのであれば、3点くらいは付いたと思います。

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