イー・アル・カンフー(コナミ) : 感想・レビュー [ファミコン]

イー・アル・カンフー : 感想・レビュー

対戦格闘型ゲーム

ファミコンではこれまで対戦格闘型のゲームと言えば「アーバンチャンピオン(任天堂)」しかありませんでしが、この「イー・アル・カンフー(コナミ)」はその「アーバンチャンピオン」とは、カンフーとストリートファイトと言った違いも含め、大きく違った対戦格闘型ゲームになっています。

以下、姫のゲーム歴の中では他に比較するものがないため、「アーバンチャンピオン」との比較が主になります。

エネルギー制

「イー・アル・カンフー(コナミ)」はエネルギー制になっています。これは「アーバンチャンピオン(任天堂)」にあったスタミナ(0になると弱パンチでも後方に転がるようになるだけで勝敗には直接関係しない)とは違い、エネルギーメーターのエネルギーが尽きた方が負け(KO)となるようになっています。

バンゲリングベイ(ハドソン)」で取り入れられていたダメージ制と同じものと考えて良いと思います。

多彩なアクション

自機の李の使える攻撃手段はパンチとキックで、更にパンチは上下段、キックは上中下段に打ち分ける事が出来ます。また、自機は真上と前方斜め上にジャンプする事が出来、キックはこれと組み合わせる事も出来ます。「アーバンチャンピオン(任天堂)」では攻撃はパンチのみで、それを上下に打ち分けて攻撃していましたが、それと比べると多彩なアクションが可能な格闘ゲームだと言えると思います。

タイプの違う敵と戦って行く

「アーバンチャンピオン(任天堂)」では同じ人間(と思しき人物)と延々と戦わなければならなりませんでしたが、この「イー・アル・カンフー(コナミ)」では各ステージ毎に特徴の違う対戦相手が登場するようになっています。

しかし、各ステージ毎に対戦相手が違うと言っても敵キャラの総数は僅か5人、ステージ6からは1人目に戻って繰り返されるだけですし、それぞれのキャラクターについてもゲーム初心者の姫が見ても作り込みが甘いように見え、「アーバンチャンピオン」よりも幾分かは良いと感じられる程度で 評価としてはそれほど高くはないと思います。

操作性に改善が必要

斜めジャンプは上と横を同時に押す必要があり、最初の頃はこれが中々難しく、斜めジャンプを出そうとして真上に飛んだり、前方に少し移動すると言った事が多くありました。操作に慣れてからはミスも減り、斜めジャンプも簡単に出せるようになったのですが、これはもう少し簡単に出るようにしておいて欲しかったところです。

また、着地の瞬間に連続ジャンプ(垂直/斜め)を狙ったつもりがジャンプを行わずに着地地点で棒立ちになると言う事が度々あり、着地後直ぐのジャンプのタイミングに難しさを感じました。着地後ではなく着地直前に十字ボタンを入れてしまっているようなのですが、少しタイミングが外れただけで棒立ちになってしまうのは悲しいです...。

どちらの場合も姫の操作ミスが原因なのですが、ジャンプに関してはボタン入力の判定が少し厳しいように感じます。少なくとも姫のようなコントローラーにもまだ慣れていない初心者にとっては。

攻撃の当たる範囲がよく分からない

攻撃が当たる範囲がよく分かりませんでした。描画上では敵キャラに攻撃が当たっているように見えるのに実際には攻撃が当たりと認められていないと言う事が多くありました。

多彩な攻撃の打ち分けが可能となっていても、それぞれの長所も短所が明確でないためどの場合にどの攻撃が有効なのかが分かり難く、打ち分けを行う事の意味を感じられませんでした。(打ち分けの有用性が明確に出るのはボーナスステージくらいです...。)

唯一、ジャンプキックだけは攻撃を当てるポイントが比較的分かりやすく、有用さもきちんと示す事が出来ていましたが...。

ガードがない

「アーバンチャンピオン(任天堂)」にはガードがありましたが、「イー・アル・カンフー」にはガードと言う仕組みは組み込まれていません。

「アーバンチャンピオン」のように上ガード、下ガードと言ったものがあれば攻撃を打ち分ける意味も出て来るのですが...。

舞台のデザインが同じ

戦いの舞台はメンマの塔と言う塔の中らしのですが、この舞台は5面毎に色の変化はあるものの(5面毎に変化、20面で1周)、それ以外の変化は見られず、同じデザインの舞台がずっと続くだけになっています。いくら塔の中とは言っても各ステージのデザインにはもう少し工夫が欲しかったです。

目的の達成されないゲーム

「イー・アル・カンフー(コナミ)」のゲーム上の目的は中国(清朝末期)で悪事を働いているチャーハン一族を撲滅する事であり、李はそのためにメンマの塔に乗り込んだらしいのですが、この李の戦いには終わり(チャーハン一族の撲滅の完了)がないらしく、目的を達成する事が出来ないゲームになっているようです。

これはプレイ意欲を大きく低下させるもののように感じられました。何のために戦っているのか、何を目的にしてプレイすれば良いのかが分からなくなります...。

もしかするとゲーム上では一切触れられていなくても5面(ループの区切り)毎にチャーハン一族の撲滅に成功して中国の平和を取り戻しているのかも知れませんが...それならばそれでプレイヤーにきちんと伝わるようにしておくべきだと思います。プレイヤーの知るところにならないのであればそれは何もないのと同じ事であり、何のために戦っているのかが分からなくなる状態は変わりませんので...。

総合評価 : 15点

「イー・アル・カンフー(コナミ)」の総合評価は15点です。

これまで唯一の対戦格闘型ゲームだった「アーバンチャンピオン」と比べるとエネルギー制になっていたり、多彩な攻撃が可能であったり、個性的な敵キャラが揃えられていたり...と色々な要素が取り入れられていて、それなりに進化している感じを受けました。

ですが、「イー・アル・カンフー」はゲームとしての出来は良いとは言えず、その非常に低い完成度から試作品のような印象さえ受けました。同じような進化を感じたものに「ゼビウス(ナムコ)」がありますが、「ゼビウス」の時に感じたものとは違うようです。

面白さは...全く感じられませんでした。夢中になれそうな要素も見当たりませんでした。

操作感覚に就いては姫の好みではないようです。このためプレイ中はプレイに対する苦痛が常に生じていました。これがなければもう少し楽しめたのではないかと思います。

「イー・アル・カンフー」は今までのゲームと比べると確かに目を見張るべき点はありますが、ゲームとしての肝心な部分が欠けている事や、その試作品のような出来から15点と言う評価になりました。

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